性的な表現があるため「R」とさせていただきます。
自己責任の上でご覧ください。
「疲れたーーっ。」
仮縫いが終わり食事と湯あみを済ませてカムイは部屋で横になり思い切り伸びていると、タクミが湯あみを済ませて戻ってきた。
カムイの状態をみてくすりと笑う。
「何て恰好してるの。」
「伸び。これすると体の流れが良くなるから気持ちいいんです。」
「へえ、どーやるの?」
「こうして寝転がって手を組んで手足を引っ張るみたいに…んーーーーー」
「ふんふん…んーーーーー…はぁ…ほんとだいいね、これ。」
「畳の上でやると格別ですね。畳と香の香りで癒されながらやるとリラックスできます。」
「敬語になってるよ。2人の時にはいいってば。」
「あ…もうクセなのよね。」
タクミはカムイに被さり抱き締める。
最初は体を強張らせていたカムイも最近はやっとすぐに受け入れてくれるようになった。
だが敬語で話しかけられたりすると以前恐怖を感じさせた時の感覚が残っているのではとタクミはとても不安になっていた。
「まだ僕が怖い? もっと気楽に接してくれていいよ。ヒナタにするみたいに…」
抱き締める腕に力を込める。
何となくヒナタとカムイの関係は察してはいた。
共に居る時のカムイの笑顔がその関係が良いものである事を示していたからだ。
信用に足る臣下だがやはりそれも心に引っかかる。
少し体を下ろしてカムイの胸に顔を寄せて抱きしめるとカムイはゆっくり頭を撫でてくれる。
その手は優しくとても気持ちが良い。
「まだ撫でて。」
「出たなー、甘えタクミ。」
カムイは笑いながら頭を撫で続けてくれる。
タクミは息をついて目を閉じる。
色んな葛藤をしたが母ミコトの手紙と臣下の後押しでこうしてカムイと恋人となりもうすぐ夫婦となる。
再会した時からずっと思い続けた。
辛い事も沢山言ったししてきてしまったがそれを許してくれた。
何よりも自分を認めてくれた。
初めて体を重ねた日も嬉しくて優しくする余裕もなかったのに全てを受け入れ抱き締めてくれた愛しい姉。
「…姉さん…」
ポツリと言って胸にすり寄るとカムイに髪を引っ張られた。
「いたたっ…姉さん、何す…」
「もう姉さんじゃないでしょ。」
「あ…ごめん…」
「癖はお互い様だけどね。」
そういうとカムイはするりとタクミの腕から抜けて立ち上がり着物を直す。
「今日は疲れちゃったし帰るね。また明日の朝、弓道場で。」
「ジョーカーには今晩は帰らないって言っておいたけど。」
「えっ?」
「側に居て、ほしい…駄目?」
立ち上がりカムイの側へ行き腰を抱き寄せて額を合わせ小さく呟くとカムイも顔を赤くして目を伏せる。
「衣装、凄く綺麗で、とても似合ってた。あれを着て皆の前に出てほしくないな。きっと皆、君に目も心も奪われてしまうよ。嫉妬でどうにかなりそう…ねぇカムイ。君は僕のものだって確かめさせて…」
尖った耳にキスをしながら囁くとカムイは体を震わせて脱力する。
タクミはカムイを抱き上げて寝室へ入って行った。
カムイが水面の上に座り手で顔を覆っている。
静かな空間に響くのは小さな泣き声。
湖の淵に立っているタクミはそれに気づき近づこうとするが足を進めても前に行けない。
その時に背中に誰かが抱きついて来て自分の胸に腕を回される。
「タクミ様…」
声に驚きその相手を見ると目を潤ませたオボロが居た。
「身分違いなのは承知しています。こんな事する女性がお嫌いなのも知ってます。儀式上の事で構いません…私を抱いてください…」
タクミは青ざめる。
王家の男子が成人する際の儀式とはいえ1人の女性を不幸にした事は消えない事実だった。
その相手は基本は破瓜を済ませた年配又は年上の女性の筈が、自分は事もあろうに臣下の破瓜を済ませていない女性だった。
気乗りしない儀式だったがその涙と言葉に流されたのは逃れようもない事実だ。
儀式は秘され他のものにその相手が知られる事は無い。
あれは儀式上の事。
お互いでそう割り切って過ごし恋愛感情にはならなかった。
だからオボロの結婚が決まった時も自分の臣下として嬉しかったし心から祝福した。
もう何年も前の事なのに何故今更…
ふいに水面のカムイが動いたような気がして目をやるとカムイは立ち上がり遠くを見つめていた。
その目線の先、霧が立ち込めた中からゆっくり歩いて来たのはヒナタ。
長い髪を下ろし今まで見た事のないやさしい顔をしたヒナタがカムイの目の前に立ち両手を広げ名を呼ぶ。
「カムイ。」
カムイは当たり前の様にその腕の中に入って行き、背伸びをしてヒナタの首に腕を回すとヒナタはカムイを子供を抱く様にして持ち上げ抱き締める。
お互い愛しそうに顔を摺り寄せ自然に唇を寄せる。
タクミは目を強く閉じ叫んだ。
「やめろ!!!!!!」
覚醒すると息も荒く汗だくになっているのが解る。
天井を見て視線を泳がせると隣にカムイの顔が見え長く息を吐いた。
喉が渇き体を起こそうと布団をはぐとカムイの裸体が目に入る。
薄暗い中でもはっきり解る白い肌は体のあちこちに自分が残した紅色の花が咲いていた。
顔にかかった髪をそっと避けて体のラインに合わせ手を這わせるとカムイの体がぴくりと動くが疲れているのだろう、寝息を立てたまま目を覚まさない。
耳にキスをしようと顔を近づけると不意に目に留まる。
よくよく見ないと解らないがカムイの首と肩には何かの傷跡があった。
杖での治療をしていればこんな傷跡は残らないがこれはその痕跡はなく自然治癒をしたものだろう。
どちらかというと何かが刺さったような傷で丁度手の指位の…タクミはその傷跡に何となく不安を覚えた。
「いくら夢見が悪いからって、なんて夢だ…」
うつ伏せになって障子越しに月明かりを眺めながら肘をついて頭を抱えていると、横のカムイも息が荒くなっていた。
苦しそうに顔をしかめ涙を流し名を呟く。
「…タ……」
タクミと呟くつもりだったのか、ヒナタと呟くつもりだったのか解らないがタクミはカムイの顔に手をやり口づける。
唇を舐め何度も啄んでいるとカムイがゆっくり目を開けた。
「…タクミ…?」
涙を拭いてやり抱きしめて耳を甘噛みする。
跳ねるカムイの体を腕で逃げられない様に縛り付け耳元で囁いた。
「名を呼ぶなら僕の名前を呼んで。夢の中でも現実でも。他の奴の名前なんか、呼ばないで…」