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・透魔設定
・タクカム♀←ヒナタ、タクカム支援B→A、S辺り
・ヒナタがカムイのフォローをしながら…という話


BGM  My Dearest/supercell

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世の中には手が届くのに届かないものがある。
父の横に座り月を眺めながらそう聞いた覚えがある。その時の父の顔は少し寂しそうに見えた。

 

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星界という異世界にひっそりと存在する広大な国。その中心となるこの城を拠点に今は見えない敵との戦真っ最中だ。暗夜白夜国共に手を取り合い戦う事になるとは夢にも思わなかったがそれもこれもこの城の主の力だろう暗夜風の建物と白夜風の建物が立つこの王族や臣下が住む夜の城はしんと静まりかえっていた。ヒナタはそこを軽い鼻歌交じりで巡回当番として定時見回りを行っていた。昼間とは違う空気ぼうっとするにも、考え事をするにも鍛錬するにも丁度良く彼は巡回当番もどちらかといえば好きな方だ。空の星を見ながら誰も居ない静かな城の中を1人歩くのもいいもんだ~とのんびりと歩いている。

だがこの日は違ってた。

満天の星を見ながら上機嫌で巡回当番をしていたヒナタが、大きな木自体が一つの城となっているこの城の中心で城主の居室となっている場所の下に座る白く光る人に気づく。その真珠色の長い髪は風に吹かれ広がるようにサラサラとなびき、まるで絵の中の人の様で一瞬目を奪われた。

「カムイ様?」
声をかけると驚いた様に自分の方を向く。その赤い瞳は涙で濡れている様に見える。

「…どうしたんすか、こんな時間にこんな所で?」
「あ、こ、こんばんは、ヒナタさん。いい夜ですね。」
ヒナタが近づくとカムイは慌てて目をこすり何もなかった様に笑顔で笑いかける。

「何でも無いんです。寝付けなくて。」
「そんな顔にゃ見えねぇけど…」
「いえ、本当になんでもなくて…」
「…そっか…今日は月も星も綺麗だよな。歩いてても気持ちいいや。」
「本当に。ヒナタさんは…」
「俺か? 俺は当番。」
「あ、巡回の…お疲れ様です。」
カムイはペコリと頭を下げる。一応この城の城主であるカムイはとても頭が低く民や一般兵にもとても近い。王族としての威厳や質を兼ね備えながらそれを見せない彼女に皆好意を抱き笑顔になる。これが彼女の絶対的な魅力なのだろう。

「いえいえ。お仕事だからな。」
「はい。いつもありがとうございます。皆さんが協力してくれるのでここもとても治安がよくて…民の皆さんも安心して生活できます。」
「ほんっとうに変わった姫さんだよな、あんたは。普通は姫となりゃそんな態度を下の者にはとらねぇもんだけどな。」
「そうですか? 私 元々身分とかそういう事がよくわからなくて…暗夜の兄達にも時々注意されてました…」
白夜で生れ暗夜で育った透魔王国の王女であるカムイは本当に複雑な環境にありながら純粋でまっすぐな人だ。聞くところによると暗夜で幽閉状態だったとの事だがそんな環境で育ったとは思えない。何故かは暗夜の王族達を見て納得した。暗夜の王族達は第一王子マークス、第一王女カミラ、第二王女レオン、第三王女エリーゼの4人。この4人がカムイをとても大切にしている事。白夜の王族達とは血が繋がっているみたいだが暗夜の王族との方が密度が濃いように見える。時々みんなで集まってお茶会なるものを開き談笑している姿はこちらから見ていても微笑ましいものだ。だからといって白夜の王族と仲が悪いわけではない。第一王子リョウマは目の前でカムイと生き別れになりいつかカムイを連れ帰る事を目標に鍛錬を積み、第一王女ヒノカはカムイを取り返したい一心で戦士となった。第三王女サクラはカムイを姉として素直に受け入れている。そういう意味ではこちらも愛情は深い…ただ1人を除けば…

「ヒナタ。」
声をかけられ目をやると眉間にしわを寄せた白夜王国第二王子タクミが歩いて来ていた。

「タクミ様。あー、すいません。サボってたわけじゃないですよ。」
そう言って言葉を返すと目の端でびくりという動きが見える。ヒナタの隣でカムイが怯えているような様子を見せている。

「姉さん、ヒナタは任務中だ。遠慮してくれ。」
「あ…す、すいません…」
「タクミ様、俺は別に…」
ヒナタが反論しようとするとジロリと睨みつけられ、すぐにカムイに目線を戻す。

「こんな時間に何してるんだ。とっとと上がって寝てよね。ほら早く!!」
手で追い払う様にされてカムイは悲しげな顔をしてゆっくりと立ち上がり部屋への階段を上がっていこうとする。ヒナタは見かねてカムイに近づきこそりと声をかけた。

「カムイ様、また話しましょう。すいませんね、タクミ様が…悪い方ではないんですよ。」
「ヒナタ!!」
「はいはいっ。んじゃ、寝てくださいねっ。」
カムイの肩をポンと叩いてニカッと笑い 振り向き去るタクミについて行きながら振り返ると カムイはヒナタに微笑み小さくお辞儀をして階段を上がって行っていた。

カムイはヒナタに微笑み小さくお辞儀をして階段を上がって行っていた。

「タクミ様。俺はたまたまあそこでお会いしただけで別にサボってませんよ。」

「…」

「というか姉君にあの態度はどうかと…」

「…お前には関係ない…」

タクミは眉間に皺を寄せたままだが明らかに後悔している。幼い頃から仕えてきた主の事だ、顔を見ればわかる。きっと言うつもりはなかったのに勢いで口からキツイ言葉が出てしまったのだろう。元々猜疑心が強く人をあまり信用しないタイプだ。白夜のきょうだい達が皆素直で人を信じる気持ちが強い分、彼がある意味のストッパーとなっているのだがあまりにそれが強すぎてうまく感情をコントロール出来ていないのだ。彼自身もそれは解っている様だが自分でもどうにもならずもがいているのだろう。きょうだいと国を守りたいという責任感が強い事は自分は誰よりも知っている。何か手助けが出来れば…ヒナタはため息をつき後ろチラリと見るとカムイの部屋の電気は消えていた。

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