・透魔設定
・道筋のその後とその間
・タク×カム♀←ヒナタ、ジョーカーなど出ます
・ねつ造ありまくりです
勝手にBGM「ハロ/ハワユ(feat初音ミク&メグッポイド)」、「キミはともだち/平井堅」
マイキャッスル内闘技場。
ここはアイテムをかけて戦う鍛錬を兼ねた場となっているが、時々訓練場として使われることがある。広々とした闘技場の真ん中で2人の男が武器も持たずに戦っている。会場のギャラリーは居ない。居ると言えばカムイとタクミの臣下ヒナタとオボロ、顔色の悪い青年を連れたフェリシアのみ。会場内に響くのは足を擦る音と手足がぶつかった時に響く接触音のみだ。武器をもたない体術で戦う男たちは息一つ乱さず余計な動きもなく素晴らしく機敏で無駄のない動きで動いている。
「カムイ様、コーヒー飲まれますか・・・?」
顔色の悪い青年がカムイの横に跪きカムイに聞く。
「あ、はい。頂きます…ああ、凄い…なんて素晴らしいの…」
「まあタクミ様ですもの。」
カムイが男たちの動きの無駄のなさに感動し胸の前に手を組んで目を輝かせオボロが自慢げに鼻を鳴らす。
「つか、なんなんすかこの戦い…?」
「カムイ様とタクミ様がご結婚なさるという事で主人がそれに足る男かどうか試すって言ってました~。」
「…馬鹿だな…あれがなけりゃ最高の執事なのによ…ヒナタさん、食いませんか?」
「お、いい匂いすんなぁ。いっただきますっ…うめっ!!!なんだこりゃ?」
「ちょっとヒナタ、タクミ様が戦っていらっしゃるんだからきちんと見なくちゃ!」
オボロはヒナタに声をかけるが当のヒナタは退屈そうにしている。顔色の悪い青年ディーアが手製のクッキーを進めると頬張って喜ぶ。
「コーヒーですが飲まれますか? お入れしますよ…」
「あーあの苦いやつ?」
「ミルク…牛乳を温めたのをいれて飲みやすいようにしましょう…」
「お、なら飲むわ。あんがとな。」
「タクミさんもですがジョーカーさんがあそこまで体術が出来るなんて…」
「父は強いっすよ…まじで。カムイ様の為に死に物狂いで訓練したっていつも自慢されますから…」
「いつもジョーカーさんには守っていただいていますからね。素晴らしい方です。」
「ついでに俺もあなたにはお仕えします。父と共によろしくお願いします…」
「はい、こちらこそ。よろしくお願い致します。」
段々と見ているのにも飽きてきた面々がお茶会の準備を始めると、匂いに反応したタクミが会場から声をかける。
「ディーア、今日は何の豆?」
下からの蹴りに反応し軽く飛び上がり避け、下に居るジョーカーに拳を落とすとジョーカーは転がり避けて体制を立て直す。
「…今日は高原で採れた貴重な豆を使ってます…」
「僕のも淹れといて。」
タクミも起きて体制を立て直し着物を軽く直す。
「タクミ様…えらく余裕ですね…この野郎が!!!」
「っと!!!」
ジョーカーがタクミの余裕な様子に腹を立てて連打を浴びせるが、タクミはひょいひょいと避けていきトンと軽く飛んで数歩後ろへ下がる。ジョーカーは拳を構えたまま呼吸を整えている。タクミも基本の空手の構え型でピタリと止まり身動き一つしない。
「ジョーカー、その体術は無駄な動きが多すぎる。もう少し動きを集約した方がいいよ。」
「ご指導どうも。でも今は指導してもらってるわけじゃないんですよ。」
ジョーカーはいつもの執事服を脱いでパンツとシャツ、手には皮のグローブのみ。タクミも動きやすい裾の短い体術用の道着に頭の髪は一つにまとめて結あげてある。結構な時間打ち合いをしているのにお互いあまり呼吸が乱れていない。その位に無駄な動きがないという事だ。タクミははとため息をひとつつくと目を開きジョーカーに向かい正拳付きを繰り出す。ジョーカーは腕でそれを弾いて腰を落とし下からタクミの顎を狙い拳を振り上げるがそれもタクミの腕で弾かれ惰性でくるりと体を一回転させて逃げられる。
「よくやるねぇ…カムイ様、帰りましょうよー。」
ヒナタはディーアに淹れてもらったカフェオレを飲みながら横のカムイに声をかける。
「でもまだ終わってませんよ。」
「ありゃ放っといたらずっとやりますよ。日が暮れちまうわ。」
「まあ確かに…親父しつこいしな…」
ヒナタもディーアもうんうんと頷きながら愚痴る。
「聞こえてるぞ、ディーア!!!!!」
「…うぜぇ…」
「てめえも降りてこい! 根性叩きなおしてやる!!!」
「皆もいるしもうやめようよジョーカー。僕はコーヒーが飲みたい。」
打ち合いをしながらジョーカーが吠えるがディーアは知らん顔で皆の世話をしていた。
朝、カムイと偶然出会ったタクミは一緒にゆっくりと歩いて自室に向かっていた。まだ朝も早く動いている人間は作業のある人間だけだ。静かなマイキャッスルではまだカムイもタクミも普段着の軽装だった。カムイは黒と白のワンピースを着ていた。黒いベースに白いレースやリボンがついている。タクミも普通の薄緑の着物を着て弓道場にいくつもりだったのでその上から袴をはいているだけだ。ふと左側のカムイに目をやるとカムイもそれに気づき嬉しそうににこりと笑顔を返してくれる。ここ最近自分が原因を作ったとはいえ、カムイに避けられすれ違っていた。嬉しくなってタクミも笑顔を返すとカムイの顔が赤くなり俯いてしまう。
「姉さん?」
「…そんな顔、見たの初めてだったから…」
その言葉に驚くが確かにカムイに対しては自分勝手な思いから冷たく当たって来た。そう言われても仕方がない。タクミは黙って視線を戻しカムイの手を握って歩き始めた。カムイは驚くが手を握られたままタクミについていく。タクミの自室の庭の入り口から戸を開けて中に入り、縁側から上がり部屋に入るとタクミは退路を塞ぐようにピシャリと襖を閉めて一息つく。
「座って、姉さん。」
座布団をポンと置いてタクミはお茶の準備を始める。
「緑茶が好きだったよね。」
そう言いながらカチャリと茶器一式を置いて小さな囲炉裏の様なものから鉄瓶を取り急須の様な形のものに湯を注ぎしばらく蒸らして一煎目をす、と勧める。
「小さい、ですね。」
茶が入った器の小ささにカムイは驚く。
「これが茶の正式な淹れ方。冷めないうちにどうぞ。直ぐに次があるよ。」
「次?」
「茶は正式な淹れ方だと三煎目まであるんだ。ほら香りが逃げない内に…」
タクミが茶碗をとって口に運ぶのを見てカムイも同じように口に含む。爽やかな風味に目が輝く。
「おい、しい…」
「ん。はい、次を淹れるから茶碗かして。」
タクミは二煎、三煎と淹れ、カムイは一口飲むたびに感動していた。
「ごちそうさまです。美味しかったです!」
「うん。また淹れてあげる。」
「…はいっ。」
タクミが笑顔でそういうとカムイは顔を明るくして応える。「また」という言葉がとても嬉しかった。タクミはすっと立つと文箱の中から一通の文を出してきてカムイの前に置く。その文には見覚えのある装飾が施してあった。亡き母ミコトの額飾りと同じものだ。カムイは文とタクミを見比べている。
「姉さんの話の前に、僕の話を聞いてほしい。」
「…はい。」
タクミの神妙な面持ちにカムイも姿勢を正すが顔がくしゃりと歪む。
「どうしたの?」
「あ…ごめんなさい。その…」
「…不安?」
「は、い。」
カムイは俯いてしまう。そうして自分の前で俯かせてしまうような癖をつけてしまったのは他ならない自分だ。タクミはそれが辛くなりカムイの傍により抱き寄せる。カムイは驚いて顔をあげるが構わずそのまま抱き締めた。
「ごめん、姉さん…全部、僕が悪いんだ。」
タクミはカムイの髪を撫でる。
「全部、僕の自分勝手な思いからの事。姉さんのせいじゃないんだよ。」
カムイは言葉の意味が解らずぽかんとしているがタクミの背中に手を回し背中を撫でるとタクミは抱き締める手の力を強くしてカムイの肩に顔を押し付ける様にしてくる。
「タクミさん?」
「好きだ、カムイ…」
その言葉目を見開き体が自然にビクリと跳ね 震えはじめる。
「好きなんだ。きっと再会した時から…ずっと。」
体の震えが収まらずタクミの着物を握る。何か言いたいのに言葉がでない。
「…僕たちは血が繋がっていない。仮のきょうだいなんだ。」
「…ぇ…?」
「リョウマ兄さんからサクラまでは父上の血を引いた子供。姉さんはミコト母上の子供だ…」
「…私は、白夜で、生まれたのでは…?」
「白夜で生まれたよ。父上がミコト母上と再婚する前に母上は姉さんを産んでいたらしい。」
「わ、たしは、誰の子…ですか?」
「ミコト母上の手紙にはそこまでは書かれていない。ただ血が繋がっていないきょうだいだという事ははっきりと…」
「お父様は、私を…」
「父上はミコト母上を大切にしていた。だから父親が誰であろうとミコト母上が生んだカムイを大切にしていたんじゃないかな。まだ小さい頃、父上の肩に乗っけられて笑う君を見て羨ましく思った事があったよ。父上に自分もやってほしいって強請ったらまだ小さいからと同じ事をしてもらえなくてね。たしかに体はまだ僕の方が小さかったけど、そんなに歳も離れていないのにさ、悔しくて寂しくて泣いたなぁ。兄さんも姉さんもカムイ、カムイでさ。僕には下のサクラしか居なかった。ただ今この事実が解ったら納得できたよ。姉さんは解らないけど、時期的にも多分兄さんはこの事実を知ってる。知ってて姉さんを妹として見てくれていたんだと思う。」
「あ…私…じゃあ…」
「カムイは今でも僕らのきょうだいだ。大切な家族だよ。ただ、もう僕は君を姉としては見られない。いや、再会してからずっと見ていなかった。」
「タ、クミ…」
「全てが暗夜に染まったカムイを見て腹が立った。敵対してた暗夜に攫われて育てられたという君を正直信用はしていなかったよ…暗夜のきょうだい達は血が繋がっていない事を最初から知っていた。だけどそれでも姉さんをここまで引っ張ってきてくれたのは暗夜のきょうだい達だ。絶対的な信頼関係を築いてお互いを護っていた。君と暮らす間に気付いたんだ。僕らにはもうそれが出来ない。大人になってしまってからでは出来ない事が沢山ある。今からじゃ取り返せないものが沢山あるんだ…だから、悔しくて、腹が立って…そこに君への想いが隠されてる事を認めたくなかった…」
カムイはまだタクミの着物を握ったままだ。
「…ああ、もう、何を言ってるのか…ごめん、混乱してるね。」
タクミはカムイの肩に顔を置いたまま首を振るとカムイから鼻をすする音がして顔を見る。カムイは顔を歪めて泣いていた。タクミがカムイの肩を持つとカムイは両手を顔に被せてしゃくりながら話す。
「カムイ…」
「きょうだいだと、思っていた、暗夜のきょうだい達も、白夜のきょうだい達も、みんな、私とは、違ってるなんて…私は、もう誰とも、本当の家族じゃ、ないんですか…? 血の繋がりを信じて、今まで、来たのに…」
「思い出してカムイ。ミコト母上の事を。ミコト母上は血の繋がっていない僕らを本当の子供の様に愛してくれたよ。だから…」
「解ってます、だけど、血の繋がりが、あっても、タクミさんの、事が好きになってしまって…それを、今日伝えようと、していたのに…」
「え?」
「伝えて、諦める、つもりでした…だって…」
「カム…」
「好きなの…タクミさん…ごめんなさい…血の繋がりがないって聞いて、安心してしまった、自分が、汚い…」
「君だけじゃない、僕も…」
「お母様…お母様…私、どうすれば…暗夜のきょうだいとの時間は私にとって宝物です…だけど白夜のきょうだいとお父様、お母様との時間はもう、戻って、こない…本当だ、タクミさんの言う通り…」
「あ……ご、ごめん。でも…」
「1人に、なっちゃいましたね。私…」
カムイはしゃくりながらも涙を拭いて薄く笑って俯いた。タクミは感情に任せてまた色んな事を言ってしまった事を悔やんだ。2人とも混乱していおり話す言葉はぐちゃぐちゃだが、思いは通じていた。タクミは大きく息を吸うとカムイに向き直る。
「違う…」
「…」
「カムイは1人じゃない。これからは僕が側に居る。」
「え…」
「好きなんだ、カムイ。1人じゃない、僕が側に居て君を守る。これからどんな事があっても。それに兄さん達もカムイを取り返そうと色々と努力してきたんだ。その思いがあればこれからだってきょうだいの絆は築ける。あれは僕の勝手な思い込みもある。下を向いて後ろを向いて来た僕の考えを、今からそれを訂正していきたいんだ。時間はかかるかもしれないけど、僕に、前を向く勇気をくれ。」
「勇気…」
「君が側に居てくれれば、僕は強くなれる。きっと前を向いて歩くことが出来る様になる、いや、なってみせる。時間がかかってもきっと。」
「…」
「…愛してる、カムイ。側に居て…」
カムイはタクミに飛びつき口づける。タクミは勢いで倒れこんでしまうが目を閉じて受け入れる。すぐに口離してしまうカムイの頭を抑えてひっくり返し覆いかぶさる様にして深く口づけるとカムイもタクミの着物を握り応える。何度も愛してると呟きながら口づけていく。
「強くなるよ、きっと。君の為に。」
口を放してカムイを見つめるとカムイは笑顔で頷く。タクミが笑い返すとカムイは顔をまた真っ赤にして両手で頬を覆う。
「何?」
「ああ、もう。その顔狡い…」
「…? 今日兄さんの所へ話をしに行こう。結婚の許しを得に…」
「はい。」
タクミはその笑顔が嬉しくて満面の笑みで笑い返した。
「…というわけで、カムイと結婚する事になったから…今まで迷惑かけてごめん。」
タクミはヒナタとオボロの居室へ行って今までの事を謝り2人に頭を下げていた。オボロは事情を聞いて目を白黒させていたが今までのタクミを見ていて納得がいったのか「よかったです。おめでとうございます。」と笑顔になった。ヒナタは腕組をして胡坐をかいたままタクミを見つめている。
「オボロ、お前そろそろ診療所の時間じゃねぇか?」
「あ、そうね。すいませんタクミ様、折角おいで下さったのですが今日私は診療所に行く日で…」
「ああ、こちらこそすまない。赤子、順調なんだろ? 気を付けて。」
タクミはそのまま部屋からオボロを見送りヒナタに向き直る。
「ヒナタ、お前のお陰だ…本当にありがとう。」
「…まあこれで一応落ち着きましたね。安心しましたよ。でもミコト様の手紙を勝手に見ちまった事は謝ります。すいませんでした。」
「いや…あれがなかったら僕はそのまま、だったと思うんだ。だから感謝してる。」
「もうカムイ様を泣かせる事はないでしょうね?」
「努力する。」
「彼女を泣かせるような事があれば、俺が問答無用であんたを叩き切ります。覚悟しといてください。」
「え?」
タクミは驚いてヒナタを見る。ヒナタは強い瞳でタクミを見つめていた。
「まさか…お前…」
「俺はあんたの臣下だ。それに彼女が幸せになるなら、それでいい。」
「オボロは…」
「あいつはあいつです。あいつの事はもちろん大切に思ってますよ。」
「カムイは、その事…」
「…すいません、彼女に対するこの気持ちは俺の宝なんです。これだけは許してください。」
ヒナタは頭を下げる。その姿を見てタクミはふうと深呼吸をする。
「…そうか…本当にお前にはいろいろと迷惑をかけてしまうな、いつも…でもありがとう…」
「はは…で、床入りされました?」
「っ!!! な、何の話だよっ!!!」
「いやー、妙に落ち着いた様子ですからねー。済んだのかなと。」
「そっ…そんな事でわかるのか?」
「男って奴ぁ単純ですからね。そんなもんですよ…って事で、無事に床入り。おめでとうございます。」
「ちっ…!!!! あーもう!!!」
「まさかまだなんですか、このご時世に。」
「どんなご時世だ!!!!」
「ははははっ、あいっかわらずですねぇ、タクミ様。」
ヒナタは真っ赤になったタクミを見て笑った。
「まだやんのかよ…」
ヒナタはクッキーをまた1つ口に頬り込んで呆れた様に呟く。
「んー…良く続きますね。」
カムイはコーヒーのお代わりのを飲みながらぽやんと答える。
「フェリシアさんとオボロさんどこに行っちゃったんですか?」
「市場に買い物。晩飯の準備でしょ。」
「もうそんな時間? あー、そうか。私も今からそうしなくちゃいけないんだ…白夜の料理、オボロさんに教えて頂いていいですかね?」
「ああオボロの飯は美味いですよ。喜んで教えてくれるんじゃないですかね。」
「今度聞いておこうっと。」
カムイはクッキーをポリポリとかじりながら笑顔でいる。
闘技場にいるタクミに近い所まで移動してディーアが声をかける。
「タクミ様、コーヒー冷めたんで淹れなおしますか?」
「うん。悪いね。もう終わらせる。」
「なんだとこのクソ王子!!!」
「父さん まじで うぜぇ…てか王子に対して無礼だから。」
「もういいだろ。勘弁してよ。」
タクミは闘技場をスタタと走って逃げ始めた。遠目にそれをみてヒナタは立ち上がり伸びをする。
「あーあっと、カムイ様、俺も当番があるんで失礼します。」
「あ、はい。すいませんお付き合い頂いて。」
「いーって事よ。な。」
ヒナタはポンポンとカムイの頭に手を置き顔をじっと見る。カムイはきょとんとしていたがにっこりと笑う。
「よかったな。」
「…はい。ありがとうございます。」
ヒナタはにこりと笑ってカムイの耳元へ顔を持っていく。
「幸せに…それが一番だ。」
カムイが目を伏せて頷くと耳に軽くキスをして「んじゃな。」といつもの笑顔で背を向け歩き始めカムイはお辞儀をして見送り姿が見えなくなって振り返った所でタクミがトトンと闘技場の壁を蹴って飛び上がって来た。手にはいつの間にか風神弓を持っている。
「タクミさんっ?」
「疲れた。帰るよカムイ。」
タクミはトンとカムイの横に降りると追いかけてくるジョーカーに「帰るよ~」と言ってカムイを抱いて飛び上がる。
「風神弓、いつ持ってきたの?」
「神器だよ? 呼んだらくるの。」
闘技場の屋根まで飛び、そこでもう一度大きく屋根を蹴って高く飛び上がる。上空の雲に近い場所はヒュウヒュウという風切りの音が鳴り下界とは違う空気と温度に少し体を震わせるとタクミがぎゅうとカムイを強く抱き顔を近づけてきた。
「タクミさん?」
「2人の時には呼び捨てでいい。名前呼んで。」
「タクミ…きゃっ…」
名を呼んだ所でまた次の建物の屋根から大きく飛び上がりさっきよりも高い位置まで来るとタクミは風神弓を回して足元に藍玉の雲の様なものを出しそこにゆっくりと立つ。足をつくと体を薄いドームの様なもので覆われた。
「わあ、凄い。寒くない……タクミ?」
「…幸せにする。きっと。」
タクミはカムイを小さく治める様に抱き締める。カムイは何となく察してタクミの頬を撫でた。
「応援、してくれてたんです…ずっと。」
「うん…」
「とてもいい方ですね。」
「…うん…自慢の家臣だ…」
「幸せになれって。」
「……うん…するよ、僕が。」
タクミがカムイに口づけると空の雲が晴れて太陽の光に照らされる。タクミはニコリと笑い大きく息を吸って叫んだ。
「カムイ!愛してるーーーーっ!!!」